コラム

門外不出!「医王石」

2025.03.06

医王石は医王山(いおうぜん)で産出される石(火山岩)です。
 
医王石は良質なミネラルを含み、その表面に汚れを吸着します。それは医王石が多孔質といって、活性炭のように大小さまざまな大きさの穴が多数あいており、その穴に汚れや微粒子がはまると出てこられなくなるからです。
 
産地である医王山は、石川県金沢市と富山県南砺市にまたがる白兀山、奥医王山及び前医王山などの総称で、標高は939m。
医王山はそこで見られる石の種類から、古来より火山と思われてきましたが、実際には海底での火山活動で生じた医王山累層が隆起してできたものとの説が有力視されています。
 
そのため、溶岩(マグマ)・海水・陸地すべての様々なミネラルを含んでいます。
地学的な分類としては緑石凝灰岩で、主成分はSiO2、Al₂O₃、CaOですが一説には約100種類もの鉱物成分が複雑に組み合わさっていると言われていて、とても神秘的な石です。
 
医王山の名前の由来については諸説あり、719年に泰澄大師が開山した際に、薬草が多いことから唐の育王山にちなんで育王仙(いくおうせん)と名付けたものが変化した説。
当時の元正天皇が大病にかかった際に、泰澄大師がこの山の薬草を献上したところ快癒されたので、山に医王山という名を下賜されたという説。
薬草が多く、薬師如来(大医王仏)が祭られたことを由来とする説、などがあります。
 
元正天皇がこの山の薬草によって病気を治療したことは、どうやら史実らしく、その薬草の中に医王石が含まれていた可能性もあります。治療法全般を指して「薬石」と呼ぶように、古来は薬草と合わせて、尖らせた石でマッサージをしたり、温めた石を抱かせたり、水につけてその水を飲んだりしたこともあったようです。
 
藩政時代はこの石を門外不出とするため、前田家により一般人の立ち入りは禁止されていました。今でも貴重な石として、大切に扱われています。